■人が人を支えられる社会とは
発達障害を抱えた人は、他の人に比べて、さまざまな課題に直面しやすいかもしれません。
しかし、取り巻く環境が個人の活動を保障し、参加に向けて後押しをするようなものならば、障害も障害ではなくなるはずです。そして、障害を抱えた本人も自分の自分の障害のことを理解し、前向きに進んでいこうとする覚悟と勇気をもつことが必要です。
この個人が自分の特性を知り、周りが個人の特性を活かす環境をつくるということは、発達障害の話に限らず、人間が社会生活を送る上で最も大切なことだと私は思います。
■ 発達障害を抱えた人のライフプランの考え方
常々気になっていることがあります。それは、発達障害を抱えたお子さんの親御さんや発達障害のある生徒を指導している中学校、高等学校や特別支援学校の先生方が、その子の人生のゴールをしきりに気にされていることです。
特に人生のゴールとして就職を考え、非常にきにされます。もちろん、わが子や生徒が自分の手を離れても自立してほしいと願う気持ちはよくわかります。
しかし、それにとらわれすぎて、今の課題を見過ごしていないでしょうか。
ゴールを設定することは必要なことです。ただし、そのゴールは日々に積み重ねによって成り立ちます。今できることや、やるべきことに真剣に取り組むとともに、忘れないでほしいのです。
学校においても「個別の指導計画」が1年ごとに立てられます。社会には、発達障害のある方を支える福祉制度もあります。地域の方々の理解やサポートも受ける必要が出てくるでしょう。
本人や親御さんだけが悩むのではなく、さまざまなサポートを活用しながら一段一段、階段を踏みしめながら焦らず着実に上がっていくようなイメージを持ってみてください
■失敗の価値
芸人の有吉弘行さん、政治家の安倍晋三さん、元野球選手の松井秀喜さん。この3人に共通して言えるのは、一度挫折しても果敢にチャレンジをして復活を遂げてきた方々です。3人ともそれぞれの場所で、現在活躍を続けています。 3人とも失敗に打ち勝つ強さの中に、自分に降りかかるできごとに柔軟に対応する姿が見てとれます。
この柔軟さというものがなかなか身につけることができない力です。失敗に打ち勝つ強さというのは頑張ることで手に入れることができます。しかし、柔軟さは頑張っても身につきません。一度、挫折してから自分をもう一度見つめなおした者にしか身につきません。挫折をしたときに、自分はどうなりたいかではなく、今の自分は何ができるのかということを客観的に自覚したからこそ、「できないものはできない」「仕方がない」、それならば「他の人の力を借りよう」「自分のできることを精いっぱい頑張ろう」というように柔軟に対応できるようになるのです。
竹のようなしなりがあるから折れないというイメージです。柔軟さを持った者が、真に強い人だと言えるのではないでしょうか。若い頃というのは失敗の連続です。失敗しても自分を見つめなおすチャンスととらえてポジティブに乗り切ることが重要なのです。